1997年、ヘヴィロック/ミクスチャーブームの真っ只中、INCUBUSはこのアルバムでメジャーデビューを飾る。
INCUBUSが”ヘヴィロック”バンドであったことを克明に記録した一枚である。
リリース後はKORN主催のFamily Values Tourに参加するなど、バンドを取り巻く環境も”ヘヴィロック”であった。
当時の同系バンドが皆、一様に重い音を鳴らしていた事を考えると、
ここでINCUBUSが鳴らしている音にさほど驚くことも無いのだが、
やはり”Morning View”を作り上げたバンドだと知ったうえで聴いてしまうと驚きは隠せない。
それは思わず「重いぞ(美味いぞ)、洋一君。」と味王のモノマネをしてしまう程。
今では考えられないくらい、ラフでファンキーなブランドンのヴォーカル。そしてジャンベを叩くブランドン。
マイク・アインジガーは無邪気にエフェクトの掛かりまくったギターを掻き毟り、
INCUBUSを語る上では欠かす事の出来ないバカテクリズム隊も、
バッキバキのスラップベースと、手数の多いドラミングで暴れまわっている。
今ではキラリと光る小技が憎いDJキルモア先生も、ここではキュッキュキュッキュと忙しなくスクラッチ。
ヘヴィロックとファンクと民族楽器の融合。全てがやりたい放題で、若さと勢い溢れる作品になっている。
しかし、当時のLIMP BIZKITらがヘヴィロック/ミクスチャー然りとしていた事に対し、
ここでINCUBUSが放っている、初期〜中期のチリペッパーズを彷彿とさせるファンクネスや急性的なグルーヴからは、
同シーンのバンド達とはどこか違う趣向を感じ取ることが出来る。
加えて、ブランドン・ボイドの、あの”伸びる声”はここで既にINCUBUSの大きな武器と鳴り響いている。
名刺替わりの一枚にしては、かなりインパクトのあるアルバムだ。
そして誰もがこの路線でヘヴィロック戦争へ身を投じて行くものだと思っていた。