1999年。久保竜彦が世界が終ると信じていた年に、INCUBUSは2NDアルバム”Make
Yourself”を発表。
そしてここから、INCUBUSにまとわり付いて離れない、
”ヘヴィロックからの脱却”というフレーズが顔を覗かせ始める。
確かに、ヘヴィロック色は明らかに薄まり、正統派ハードロックの趣が強くなっている。
ブランドンの歌唱力を生かすべく、楽曲はよりメロディアスに、よりドラマチックに変化を遂げた。
バンドサウンドは一体感を増し、またブランドンも、自身の歌声が、
メロディアスな楽曲の方がより映えることをリスナーに印象付けている。
このアルバムには、INCUBUS初のヒット曲が収録されている。
それはヘヴィロックの微塵も感じられない、叙情的なアコースティックチューン”DRIVE”だ。
そして非常に興味深いのは、”DRIVE”の歌詞なのである。
もし俺が 群がる蜜蜂の一匹になるチャンスを 放棄することにしたら
ワインよりも水を選んで 誘惑に負けず しっかり運転することになるのかな
考え過ぎと言われればそれまでだが、
この詩からは、INCUBUSが暗に”ヘヴィロックからの脱却”を匂わせている気がしてならない。
あの頃は、ヘヴィロック/ミクスチャーならば、ある程度のクオリティがあればヒットを打てる時代だった。
つまり、その手を音楽をやっていれば比較的簡単においしい思いができちゃうわけだ。
しかし、ブームはいつかは収束するもの。それをわかっていたINCUBUSは、
目先の成功を放棄し(計らずも”Make Yourself”は200万枚越えのヒットを記録)、
時代に左右されるもの(ワイン)よりも、いつでも皆から必要とされる存在(水)を目指したのだろう。
そして物語は、傑作”Morning View”へと雪崩れ込む。